重金属類には有害性を有する物質が多く、そのため様々な形で規制されています。
ここでは、それぞれの重金属の有害性と法規制について広く紹介することで、 重金属類について、理解を深めていただければと考えています。
六価クロムとは
今回は六価クロムのお話をさせていただく前に、クロム(Cr)についてお話させていただきます。 クロムとは、元素記号Crで表わされる金属で、用途として鋼の耐食性を高める目的で鉄との合金として用いられる他、顔料やクロムなめし剤等としても用いられております。1)。

では、六価クロムとは一体なんなのでしょうか?
六価クロムとは、難しく言うとクロム化合物のうちクロムの酸化状態が+6の物(Cr6+と表記)を指します。元素としては前述のクロムと同じもので、ほんの少し形態の違う物を六価クロムと呼ぶと理解して頂ければと思います。しかしながら、六価であることで非常に強い毒性を持つことが知られており、その為に特に六価クロム(基準によってはクロム)として様々な規制の対象となっています。以下、六価クロムの毒性等について考えてみましょう。
六価クロムの病理
では、六価クロム中毒とは、どのような症状を示すのでしょうか。
六価クロムの代表的な中毒症状として鼻中隔穿孔という病気があります。症状としては、右の鼻の穴と左の鼻の穴の間にある壁に穴が開くというもので、労働衛生上の問題として広く知られております。
また、その他にも、がんや皮膚・気道障害を示すことが知られており、これらの症状は六価クロムが強い酸化力(化学反応のしやすさ)を持つためと考えられています。2)

六価クロムに係る法規制等
六価クロムに係る法規制は、非常に厳しく設定されております。
六価クロムに係る主な規制として、「水質汚濁防止法」においては、「0.5mg/L以下」3)、「RoHS指令(有害物質使用制限令)」においては、「非含有」と定められている4)など、非常に厳しい規制がかけられています。また労働衛生上の観点から、「作業環境評価基準」としても、「0.05mg/m3」8)と厳しく設定されています。